2008/12/24
笑福亭鶴瓶という男
カッコ悪いのがカッコイイのだ。
それはM-1翌日の話。久本さんに呑みに誘われ、『M-1よく頑張った会』なるものを開いてもらった。「M-1に挑戦する」と決めた日からずっと気にかけていただいていて、何度も何度も連絡をくれていた。結局負けちゃって、それでも「よくやった」と設けてくれた酒の席。ちょうどそのタイミングで鶴瓶師匠からの電話。
「いよいよやなぁ~西野」
???
師匠の第一声がソレだったので、何の事かわからないボク。もちろん尋ねる、「何がですか?」
「まぁまぁ、それぐらいがお前らしくてええわ。あまり気負いすぎてると、こういうのは・・・」
引き続き何の事を言っているのかが分からない。もう一度聞いた「何の事を・・?」
「お前の漫才を見せてやれ。絶対取れよ」
師匠のミニコントが始まったもんだともちろん思う。しばらく付き合って最後に、「・・いや、昨日負けたわ!」と突っ込んだ。
「昨日?」
あれ?反応が良くない。「M-1グランプリは昨日負けたわ」ともう一度丁寧に言った。
達人の噺家がまさかの沈黙。そして出てきた言葉・・「え?」
詳しく聞けば、仕事が立て込んでいたらしく、放送の裏で収録をしていたのもあり、たまたまお笑い関係の人がいない現場が翌日まで重なった為、21日にM-1グランプリ2008が行われていた事に気がつかなかったらしい。何がどうしてか、26日が決勝だと思い込んでいたとの事。
結果的にだが嫌味を言ってしまった事を激しく反省する師匠。そして・・
「西野さん。今、どこかで呑まれているのでしょうか?謝りに行かせていただいてもよろしいですか?」
かくして、久本さんと呑んでいる席に笑福亭鶴瓶がやって来ることとなったわけで・・。
数分後に店に到着した師匠。まさかのパジャマ姿。聞けば、奥さんが寝られているその奥に着替えがあったらしく、まさか後輩に謝りに行く為に奥さんを起こしてしまうワケにもいかず、そのまま来たのだと。タクシーを降りた場所も悪く、何故か店から数分の場所。体は冷え切りメガネは霜で真っ白、夜中に現れたパジャマ姿の50代後半に店は大爆笑。「どうもすみませんでした」の一言も重なって笑い声が鳴りやまない。
とりあえず席に座るも、はずみでポン酢が倒れ、師匠のパジャマのズボンにこぼれる。「何しまんねやー」の声が店に響いて、またまた店内は爆笑。トイレから帰ってきた師匠が手にしていたのは日めくりカレンダー。そこには一日ごとの言葉が綴られており、本日の言葉は「口は災いのもと、軽はずみな発言には気をつけるべし」とドンピシャリでまたまた爆笑。酒を呑みながら、そして時間は0時を迎えようとしたところで、師匠が一言。「あと数分で誕生日でんねん」、そう12月23日は笑福亭鶴瓶、57回目の誕生日だったのである。「せっかくだからこのまま誕生日会をしましょう」と言ってみたが、それが目的で来たと思われるのも嫌だったらしく、照れ屋の師匠は「そろそろ帰りますわ」と。そんなワケで誕生日5分前にタクシーに乗り込む師匠。なんだかその生き様に胸を打たれてタクシーが見えなくなるまで見送りました。
後輩に謝る為だけに夜中にやってきて、パジャマにポン酢をこぼして、皆に笑いを残して帰った笑福亭鶴瓶は、57回目の誕生日をタクシーの中で見ず知らずの運転手のオジサンと迎えたのである。とはいえ、きっと誕生日の話から見ず知らずの運転手のオジサンとタクシーの中で盛り上がっていたに違いない。笑福亭鶴瓶とはそういう男だもの。見習いたい。
見送ったボクらの元に師匠を乗せたタクシーが再び戻ってきた。運転手さんが道を間違えたんだとさ。
最後までカッコ悪かった。だから好きだ。




