2010/03/17
嘘をついて飯を食う
「もう、芸人が書く小説は売れないよ」とよく言われる。これから出そうとしているのに、あんまりな言葉だぜ、まったく。
たしかに芸人小説の当時の売れ行きと比べると、数字でいうと下がっているのは事実だと思う。だけど言い方を変えれば、ようやくフラットな状況になったのだと思う。そもそも、小説執筆を生業としている方々の所へ横入りしているのだ。そうそう簡単にやらせてもらえなくて当然。そして、だからこそ、そんな時に評価を受けることに意味がある。ボクはよけいに興奮してしまう。
それにね。得が少ないからといって取りやめるわけがない。お笑いを作る側なんだから、プラスマイナスで自分が少しマイナスになるぐらいがちょうどいいし、なによりボクらは石に齧りついてでも自分の好きなことをやり続けなくちゃ。それがボクらのお仕事だ。
当時、大阪でやっていた自分たちの番組は規制が多くて、なかなか自由に身動きがとれなかった。収録終わりはディレクターさんと呑みに行って「いつか、もっと‥」という話を毎回していた。そのためには自分たちがもっと発言力を持たなくちゃいけない、とかなんじゃかんじゃ言いながら、こうして東京にやって来た。
今度、そのディレクターさんとお仕事をすることになった。近道だったか、遠回りだったか、あの大阪の夜からとにかくずいぶん時間はかかったけれど、あの夜に話したようなお仕事。それが何かはまだ言えないけれど、周りの人たちからしてみれば、そんなに大きな仕事の話ではないかもしれない。事実、今日、芸人仲間から「なんで、そこに時間を使うの?」と言われた。
やりたいのよ。
やりたくてしかたがないの。やりたいことがやれると信じて飛び込んだ世界だから、往生際悪く、やりたい。“若手芸人というものは、この仕事をして‥この仕事をして‥”という、もはや一般の方にも知れ渡っている若手芸人の仕事の方向性があるでしょ? もし、自分のやりたいことがそれだったら、もちろんそれをやっている。ボクはたまたま、そっちの方向じゃなかっただけ。無理に修正したところで、そっちに進みたいと根から思っている人たちに勝てるわけがない。
「やりたいことばっかりやってちゃダメだ」と聞くけど、やりたいことばっかりやりたい。“楽をしたい”ということではなくてね。うん、それは全然違う。やりたいことを成すために地獄みたいにツライ思いをすることなんて頻繁にあるもん。ボクはね、「嘘」みたいなことをやりたい。
現実をしっかり受け止めて、人の注意もキチンと聞きながら生きていくのなら、そもそもこんな世界に入ってない。
楽しい嘘で皆を騙さなきゃ。




