ここで、ボクのブログに頻繁に登場する『糞ダルマ』なる人物について紹介することにしよう。
『糞ダルマ』というのは彼のビジュアルからつけられた呼称で、その名を『山口トンボ』という。しかしこれもペンネームで、本名は『山口大介』という画数を最小限におさえた初級漢字のみで構成された名前だ。きっと、ご両親が漢字が苦手だったのだと思う。
数年前のある日、ブロードキャストの房ちゃんが「会わせたい奴がいるんですけど‥」と言って連れてきたのが、糞ダルマだった。
その場で彼は「漫才コンビを解散したので、地元の名古屋に帰って作家をやろうかと思っているんです」と言い、ボクは“なんかダメ”な気がしたので、「なんか、ダメ」と答えて、3日後に控えていた独演会の青森公演の宿泊ホテルをその場でおさえた。
そんなわけで、彼は図らずも東京に残ることとなり、いわゆる“座付作家”となったわけだが、その条件として滝廉太郎メガネをかけること(‥だって、作家っぽいし)と、間違ってもネタを書いてくるような真似はしないことを義務付けた。彼はそれを今日までキチンと守り、「1本もネタを書いたことのない作家」としてキングコングのライブに付いている。“給料泥棒”というより、この場合は堂々宣言した上での泥棒なので、“給料怪盗”である。
彼の名誉のために言っておくと、ボクら以外のコンビにはネタ作りの手助けをしているらしい。それがどんなネタかは知らないが、あんな『タートルズ』みたいな体型から産み落とされるネタなんぞ面白くないに決まっているので、担当のコンビの方が不憫でならない。
ある日のことである。
前日の夜からの作業が、昼前に完全に煮詰まった。苛立ったボクは、仕事をほったらかして圧倒的な贅沢がしたくなる衝動に駆られ、筆を置き、糞ダルマを強引に連れ出し、北海道へ飛んだ。カニを食べるためである。
ちょうどロバートが北海道の学園祭に出ているという情報を聞きつけ、我々は北海道に到着するやいなや、ロバートのいる学校へ向かった。そのまま学園祭に飛び入り出演を果たし、馬場ちゃんを誘拐して、美味しいカニのお店へGO。
馬場ちゃんが「何しに北海道まで来たの?」と訊いてきたので、「カニを食べに来たよ」と答えると、「そりゃ贅沢だね」と欲しかった感想をくれたので、ボクはニヤニヤ笑う。その横で、糞ダルマは一心不乱にカニを食べたのだった。
しかし、ボクの贅沢を軽々と上回った糞ダルマ。彼は、カニの美味さに乗せられて、どんどんお酒を呑み、ついには酔っ払い、先ほど食べたカニもろともトイレでゲロゲロしたのだ。
北海道までカニを食べに行って、食べたカニを北海道に吐き出して帰ってくるという、誰も成しえなかった究極の贅沢を彼はやってのけたのだ。
それからというもの、彼は天井知らずの贅沢快進撃を進めた。仕事で競馬場に行ったときには、競馬ド素人のボクに「有り金を全部『7』に賭けろ」と乱暴に命じられ、涙ながらに全財産4万円を賭けたところ、見事的中。一瞬にして、230万円の大金を手にしたのだ。つづいてボクが、「230万円を全部『7』に賭けろ」と言ったときには、もう彼の姿はなかった。お金を持って逃げたのだ。
ベネチアへ連れて行ってやったら、景色を観るなり、「熱海みたいで綺麗ですね」と爆弾発言。
思えば、この辺りから彼の贅沢病が慢性化していたのである。
そして一昨日である。
渋谷での仕事を終え、夜には大阪入りしなくてはならなかったボクは、車を五反田の我が家に置いて、品川駅に向かう予定だった。そのボクを捕まえて、糞ダルマが言うのである。
「僕、次の現場が神保町なので、乗せてってもらってもいいですか?」
なんてこったい。
五反田と神保町は正反対だし、ボク先輩だし‥、といろんな考えが脳裏を駆け巡ったが、「そんなことをチマチマ説明して断る方がサムイ」みたいな空気が仕上がっている。悪びれた様子が微塵もないあの表情のせいだ。
数分後。
ハンドルを握るボクの横で、助手席のシートにもたれながら、アイフォンをいじる糞ダルマがいた。まるでアメリカの太った子供だ。
彼を神保町まで送ったせいで新幹線の時間がギリギリになってしまい、品川駅のホームを全力疾走していると、そんなことは露知らずの彼から、オモシロ画像が添付されたメールが届き、ボクは息をきらしながら、「とんでもないモンスターを生んでしまった」と頭を抱えたのだった。
2010.5.31(月) SUNSHINE STUDIO 『第45回 西野亮廣独演会 名古屋公演』
5月下旬発売 小説『グッド・コマーシャル』
2010.7.14(水) DVD『西野亮廣独演会』