2010/04/11
年甲斐もなく今夜も
「メンバーが私服で番組に出るのは意外と珍しいことだったなあ」と、『はねるのトびら』のロケ帰りのタクシーの中で思う。桜は散り始めているけれど、窓を開けるとまだまだ肌寒かった。
そのままタクシーに乗って中目黒の酒場へ。待っていたのはタモリさん。沼津の地ビールを呑みながら、さっそく四方山話に花が咲く。「その大きなカバンは?」と訊かれたので、待ってましたとばかりに中身を出す。『Zip&Candy』の原画。
タモリさんはひっくり返って、ボクは「どんなもんだい」とニンマリ。店内の外国人さんが絵に集まってきて、何を言っているかよく分からなかったけど、皆に頭をなでられて嬉しかった。
そしてタモリさんとの話は本題へ。カバンの一番奥に入れておいた数枚の紙を取り出して、渡す。二人で考えていることを、ボクがパソコンでまとめたものだ。タモリさんはジッと紙を睨んで、最後まで読み終えると二コッと笑った。
そこからは「こんなのはどう?」「じゃあ、ここを削って、ここを足してみては?」と、めいめいにアイデアを出し合った。
「旨いハンバーガー屋がある」という話になり、「今から行こう」とハンバーガー屋さんに移動した。ハンバーガーを注文すると若い店員さんが『スクラッチカード』を2枚くれたのでさっそく削ってみたけれど、結局二人ともハズレだった。
「次はどこに行く?」という話になり、「家に行こう」とタモリさん宅にお邪魔した。「あら、お久しぶりです」とわざわざ玄関まで迎えに来てくださったタモリさんの奥さんはあいかわらず上品で、とてもキュートだったのだ。
奥さんは『Dr.インクの星空キネマ』を読まれたようで、その感想を丁寧に語ってくださった。その横からタモリさんが「実はもう第2弾を作ってるんだよ」とパスをあげてくださったので、“エへへ”と笑いながらカバンから『Zip&Candy』の原画を出して、その全てをリビングに広げた。
三人ともが両手両膝をついて、気になる原画があれば手に取り、そうして少しの間、絵を眺めた。「さっき、この絵に外国人がいっぱい集まってきたんだよ」と我がことのように奥さんに自慢していたタモリさんを、ボクは好きだと思った。
そしてついにはベロベロに酔っ払い、オーディオルームへ移動。クラッシックを流して、『エアー指揮者』を延々とやった。とにかく器用なタモリさんの『エアー指揮者』は、10分、15分‥と続けているうちに本当に楽団を指揮しているように見えてきて、そのタイミングでタモリさんの額から汗が垂れたので、その一生懸命さに腹がよじれるぐらい笑った。愚行の極みだ。演奏が終わった時には肩で息をされていたので、「阿呆だ」と、また笑ったのだった。それは、もう真夜中のこと。
「明日、早いの?」「朝から『はねトび』のロケです。タモリさんは?」「俺も朝から‥」、そんな会話を交わして、「じゃあ」と別れた。
帰り道。この感じ知っているなあ、と思った。
学生時代だ。毎日のように皆がひっくり返るイタズラを計画して、飯を食いながら「次、どこ行く?」と話して、スクラッチカードはあいかわらず当たらなくて、夜は誰かの家に転がり込んで、夜更けまで何の為にもならないくだらないミニコントを延々と続けていたっけ。
体育教師の竹刀から逃げ回り、地元の不良にビビって、補習授業に愚痴って、女の子には全然近寄れなくて、見事に女の子に近寄っている男子を「女たらし」と影で罵りながらも、本当は死ぬほど羨ましがったていたあの頃。戻りたいとは思わないけれど、あの頃に対する憧れがボクの中にあるのだと思う。
だから、それを続けられるこの世界に飛び込んだのだ。変に賢くやりすごせるようになっちゃ、この世界に飛び込んだ理由がなくなる。この世界に飛び込んだ以上、時には、年齢にふさわしい思慮や分別を忘れられる阿呆でいなきゃね。
タモリさんと遊んだ帰り道は、いつもそんなことを思う。




