2010/04/ 5
『グッド・コマーシャル』という小説
来月下旬に発売されるボクの処女小説は『グッド・コマーシャル』というタイトルだ。
このタイトルをすでに知っている人がいる。実は、もともとは舞台作品だったのだ。最初は中野の小さな劇場での公演、その後、神保町の劇場でもやった。
その公演を観に来ていた皆さんの言葉に後押しされ、小説化の話は少しづつ前に転がり始めた。
ボクの好きなテレビ東京の佐久間さんの「この作品はもっと多くの人に観てもらわないともったいない」という言葉が、まず最初に頭に残った。
とは言うもののどんな方法が‥、と考えているうちに、舞台を観に来られた多くの業界関係者の皆さんから「これは日本中に伝えないと」という言葉をいただき、そして幻冬舎の舘野さんの「よそで小説を出したら自殺するよ」という阿呆な言葉を聞いて、覚悟が決まった。
何本か作った舞台の中で、小説にするには『グッド・コマーシャル』が一番向いていると思っていたのは確かだったけど、『グッド・コマーシャル』のアウトプットの方法として最初に頭に浮かんだのが舞台だったのも確か。
それを小説化した時に、たとえ世に広まったとしても、自分の中でそのアウトプットの方法として“2番目の選択肢”であることには違いない。舞台が終わってすぐに執筆に入ったが、すでに完成している物語に実に1年半もの歳月がかかってしまった理由はそこにあった。
舞台を文章にしただけでは舞台を超えられない。超えられないのなら出さない方がいい。そんなことで、小説として書き上げた『グッド・コマーシャル』を去年の夏に一度捨てた。それは舘野さんと袖山さんの判断で、「舞台を超えていない」というのが一つと、本としての最低ラインを『Dr.インクの星空キネマ』に設定したことがひとつ。そちらも超えなければいけないのだ。
作業の手を止めて、2009年の夏はひたすら本を読んだ。意識的にインプットの時間を割いたのはこの世界に入って初めてのことだった。不安もあったけれど、これをしなきゃ変わらない、という気持ちが強かった。
『グッド・コマーシャル』の舞台脚本も捨てて、資料用に撮影していたDVDも捨てた。それを見ながら作っているうちは、いつまでたっても超えられないと思った。
入口の設定だけ残して、あとはゼロから書き始めた。まったく別の物語になれば、それはそれでいいと思った。それは初めての1人暮らしで、誰の目を気にすることも、何の規制に縛られることもない自由を手に入れた感覚に似ていて、踊りたけりゃ踊るし、堂々Hビデオだって見られるし、買ったばっかりの洋服でプチファッションショーをして、たとえ自分に酔いしれようとも、兄弟にバカにされることもない。
そんな調子で再び走らせた筆はとても生き生きしていて、小説を書くことがただただ楽しくなっていた。結果、舞台とは大きく変わった。
小説を書く芸人さんはたくさんいる。芸人の中でも、芸人なりの分析があったりして、「本を出すなら自叙伝の方が‥」とアドバイスも受けたが、ボクは平凡な少年時代を過ごした普通の男の子だったし、それにボクの人生は明日の方が面白いし、なによりボクは嘘をつきたい。誰も経験したことのない、とても楽しい嘘を。『グッド・コマーシャル』はそんな嘘の物語。
どうか来月下旬までに1000円ちょっとのお小遣いをためておいてくださいな。それと引き換えに、あなたをとんでもなくドキドキさせてやろうと思います。
とんでもなくね。




